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エッセイ

左手のコンクール


昨年、世界で初めて開かれたのが、左手のピアノコンクール。

そのドキュメンタリー番組を見ました。

プロ(音楽の専門的な教育を受けた人たち)部門予選、アマチュア部門、プロ部門本選と3日間に渡ってのコンクール。

プロ部門本選に選ばれたピアニストたちは、局所性ジストニア、という病気にかかっています。

音楽家の50人に1人が発症する病気。

長年にわたり、指を正確に、繰り返し動かすことで、脳が誤作動を起こし、右手が思い通りに動かなくなるそう。

ピアニストになろうとする人が普通に、全員やっていること。

真面目に努力すればするほど、発症する可能性が高くなる。スポーツ選手と同じですね。

有効な治療法は確立されていないそう。

絶望感にひたる中で出会うのが『左手のためのピアノ作品』なのです。

通常、右手がメロディ、左手が伴奏になっていることが多いピアノ作品ですが、左手のための作品は、親指がメロディを、あとの指が伴奏を担当します。

左手を酷使する演奏に、感動とともに、左手の負担を心配してしまった。

アマチュア部門で参加した、20歳の色白メガネ青年。ぱっと見は、あどけなさの残る中学生。

幼少期に患った脳腫瘍で、右半身の麻痺があります。

家族が見守る中、カッチーニのアベマリアを弾きました。本人大満足の演奏。私も、この曲はいつ聞いても涙腺ゆるむ。でも3位までの入賞者に選ばれず。

呆然とする青年が「難しい曲弾かな、あかんのかなぁ」(コンクールは大阪の箕面市で開かれました)と母につぶやく。

アマチュアの人たちは自分の演奏に対し好意的でした。

そしてプロ部門参加者の、自分への厳しさ。これが、プロフェッショナルなのかも。

夕暮れの中、ハタチの青年が母と手を繋ぎ、コンクールを見守った2歳下の弟と父とゆっくり歩く後ろ姿に、この家族の幸せを願いました。

最近知ったのが、うちの夫はピアノが弾けるようになりたい、ということ。

『駅ピアノ』『空港ピアノ』というBS番組がキッカケと思われる。憧れを募らせ、勇気づけられ。

そして、ピアノ関係の番組をせっせと録画している。この番組も夫のおかげで知った次第。

夫は今回、私はまったくわからなかったプロ部門の入賞者の順位も当てた。

ただ、ピアノの前に座ったことはない。
私のダメ出しを恐れているらしい。

夫のコソ練のため、外出を増やすかな^_^